痙攣や意識消失が起こる
「てんかん」
てんかんとは、大脳の神経細胞の過剰な興奮によって、脳で発作的な症状が繰り返される慢性疾患です。
この発作は前触れなく突然起こり、痙攣など正常とは異なる身体の症状、意識消失や運動・感覚の異常が見られます。年齢に関係なく起こる病気であり、国内だけでも100万人以上のてんかん患者がいると言われています。
てんかんの症状チェック
てんかん発作には、以下のようなさまざまな現れ方があります。1つでも該当する場合には、当院にご相談ください。
- 意識の消失、手足の硬直があり、その後ガクガクとした全身性の痙攣が起こる
- 短時間(数秒~数十秒)の意識消失
- 手足、肩などが意思に反してピクっと動く
- 頭が前方に倒れ、両手が上がる
- 身体の一部に、意思に反して力が入る。またそれが広範囲に広がる
- 身体の一部において、異常な感覚が生じる
- 腹の奥から何かがこみ上げてくる感じ
- 原因不明の急な動悸
- 物が歪んで見える
- 原因の分からない恐怖感
- 初めてであるはずの経験を、以前もどこかで経験したように感じる(デジャビュ)
てんかんの原因
てんかんの原因は、神経細胞の過剰な興奮です。
脳の形態異常、外傷、脳炎、脳症、脳梗塞、髄膜炎などによって引き起こされることもありますが、はっきりした原因が分からないケースも少なくありません。
なお、てんかん自体が遺伝することはないものの、てんかんになりやすい体質には一定の遺伝性があると言われています。
てんかんのメカニズム
脳は、神経細胞が集まる場所で、それぞれが電気信号を使って情報をやり取りしています。この電気信号が正常に働くことで、私たちは考えたり動いたりすることができます。
しかし、てんかんでは、脳の一部で突然異常な電気信号が発生し、その信号が広がることで発作が起こります。これを「電気のショート」のようなものだとイメージするとわかりやすいかもしれません。この異常な電気活動がどの部分で起こるか、またどれだけ広がるかによって、発作の症状が異なります。
てんかん発作そのものは短時間で治まることが多いですが、繰り返し発作が起きることで日常生活に影響を及ぼすことがあります。適切な治療を受けることで、発作の頻度を減らしたりコントロールしたりすることが可能ですので、専門医に相談することが大切です。
てんかんの検査
問診・神経学的診察
問診では、発作時の症状・状況、既往歴、家族歴、服用中の薬などについてお伺いします。発作時の症状については、スマホなどで撮影した動画があれば、診断に役立ちます。
脳波検査
頭部にセンサーを取り付け、脳の神経細胞が発するわずかな電流を記録します。
発作のタイプの判断、診断において特に重要となる検査です。
MRI検査・CT検査
脳の形態異常を調べるためのMRI検査・CT検査を行います。
CT検査が必要にった場合には、提携する病院をご紹介します。
てんかんの治療
薬物療法
抗てんかん薬の内服または注射を行います。抗てんかん薬にはさまざまな種類があり、患者様によって適切に使い分けます。また第一選択となる抗てんかん薬で十分な効果が得られない場合には、薬の種類を変更する・組み合わせることで対応します。
抗てんかん薬を使った薬物療法により、約70%で改善が認められます。
手術
薬物療法で十分な効果が鰓得ない場合には、てんかん焦点切除術などの手術が検討されます。
手術が必要になった場合には、速やかに提携する病院へとご紹介します。
てんかん発作が起きた時の対応
てんかん発作が起こった時、ご本人だけでなく、まわりにいる人も慌ててしまいがちです。
まずは落ち着き、経過に応じて以下のように適切に対応することが大切です。普段から、ご家族と対処方法について話し合っておくことをおすすめします。
発作が起こってすぐ
- 車道、階段で発作が起こった場合には、安全な平らな場所へと移動させましょう。
- 身体を横向きにし、シャツのボタンを外す、ベルトを緩めるなどして呼吸しやすい状態にします。
- 発作が起こった時刻を確認します。メモをしておき、受診時に医師にお伝えください。
- 数分以内に痙攣が治まった場合には、10~20分以内に意識も回復するため、様子を見て構いません。
- 痙攣が治まらない場合、意識が戻らない場合には、病院へと連れていきます。
発作中
- 発作中、名前を呼んだり、身体を押さえつけたりはしないようにしてください。
- 発作中、舌を噛まないように口の中にタオル・指などの異物を入れることはおやめください。痙攣によって舌を噛み切ってしまうということはありません。
- 発作直後も、吐いたものが気管に詰まらないよう、顔は横を向けたままとします。
- 発作直後、眠ってしまう・朦朧とすることがあります。頭をぶつけたりしないよう、まわりの人が付き添ってあげてください。
発作後
- 深い呼吸をしながら眠ってしまうことがあります。過剰に興奮した脳を休ませていますので、そのまま眠らせましょう。
- 初めての発作であった、また治療中だけれど長い発作があったという場合には、当院にご相談ください。
よくある質問
てんかんは完治しますか?
てんかんが完治するかどうかは、原因やタイプによります。一部のてんかんは治療や成長に伴い発作がなくなり、薬が不要になることもあります。しかし、慢性的に発作が続く場合もあります。治療で発作を抑えることが可能な場合が多いので、適切な治療を続けることが重要です。
てんかんはどういう時に起こりますか?
てんかん発作は、強いストレス、睡眠不足、飲酒、疲労、明滅する光(フラッシュ)などが引き金になることがあります。また、体調不良やホルモンバランスの変化が影響することもあります。これらの要因を避けることが発作の予防につながります。
てんかんで寿命は変わりますか?
ほとんどのてんかん患者さんでは寿命に大きな影響はありません。ただし、発作中のけがや事故、または重積発作(発作が止まらない状態)などのリスクがあるため、注意が必要です。治療や生活管理を適切に行えば、安全に日常生活を送ることができます。
てんかんで障害者手帳はもらえますか?
てんかんが原因で日常生活や仕事に支障が出ている場合、医師の診断に基づいて障害者手帳が交付されることがあります。手帳を取得することで福祉サービスや支援を受けることが可能ですので、必要に応じて医師に相談してください。
てんかんは遺伝しますか?
てんかんの一部には遺伝的要因が関与している場合がありますが、必ずしも親から子に遺伝するわけではありません。遺伝以外の要因(脳のけがや病気)が原因となる場合も多いです。ご家族の中にてんかん患者がいる場合でも、発症リスクはそれほど高くないことが多いです。心配がある場合は、専門医に相談してください。